藤井風 / 何なんw(イントロ)

 

自己紹介から数日経ってしまいましたが、やっと更新できます。

今回は藤井風さんの『何なんw』を、音楽的に踏み込んで解説してみます!

 

 

まずはイントロ部分の解説になります。

ちょっと難しい内容にもあえて触れています!

音楽知識のあまりない方でもわかりやすいように

解説していますのでご安心を。

 

少しでも良さが伝わりますように。

 

(記事中に記載している秒数は、

YouTubeの公式動画内での秒数と対応しています)

 

 


藤井風(Fujii Kaze) - “何なんw ”(Nan-Nan) Official Video

 

 

 

イントロからやばめ

 

 クラシカルな雰囲気のピアノイントロから入りますが、

まずここが強烈。

意図的にテンポが一定じゃなくなっていて、

いわゆる揺らしている表現になります。

でも、聴いていて不安定さは感じさせない。

フレーズも細かくて、ビシッと耳に入ってくる。

 

聴き始めて数秒でカッコいい曲だとわかるわけです。

 

さらに細かい音符の上昇フレーズを畳みかけたその直後

楽器offでコーラスのみの部分に入ります(0:10~)が

なんといっても、舌打ちが輝いています。

 

普通、自分の曲に、ましてや記念すべき1st シングルに

「舌打ち入れてみようかな」とか思わないですよね。

しかしこの曲では、いい意味ですごく印象的な部分になります。

 

 

ちなみに、僕の4歳の息子も、

この曲がかかると舌打ちの真似をしてます。

舌打ちなんかするんじゃないと日頃教育をしていますが、

この瞬間だけは許容せざるを得ません。

 

(この舌打ち部分の細かいリズムの表現方法について

どうしても触れたい内容がありますが、後述します)

 

裏切りのノンダイアトニックノート

 

コーラスが終わり、バッキング(楽器の伴奏)パートに移ります。

(0:21~)

が、その直前の0:20頃の部分に着目したい。

 

そこまではペンタトニック(あとで少し触れます)のメロディと

それに対する一般的なハモリでコーラスが進行しますが、

最後の一音だけ、様子がおかしいんです。

 

ちょっと小難しいお話。

この曲のKeyはBマイナー(もしくはDメジャー)なので、

B(シ), C#(ド#), D(レ), E(ミ), F#(ファ#), G(ソ), A(ラ)

の7つの音を基本に構成されます。

簡単に言うと、だいたいのメロディーはこの7種類の音を

組み合わせてつくられています。

 

(※このうち、C#(ド#)とG(ソ)を抜いた5つの音が

さっき出てきたペンタトニックと呼ばれていて、

イントロのメロディはこの5種類の音で構成されています)

 

まず、トップノート(一番目立つメロディの音)が

C(ド)です。

つまり、さっきの7つの音から外れてる音なんです。

こういう音は上手に使われるとすごく印象的な響きがあって、

簡単に言うとカッコいいんです。

 

このように、基本から外れた音を

ノンダイアトニックノートといいます。

 

たまに登場すると、意表をついて

「おっ?」と思わせる効果があり、僕は大好きです。

 

無論、この曲のこの部分においても、

シンプルなペンタトニックフレーズから一転、

突然こんなノンダイアトニックノートが登場し、

その余韻で次のイントロ部分へ移っていく。

 

めちゃめちゃカッコいい。

 

そしてさらに、そのC(ド)の音の裏でなっているコード(和音)が

Gsus4/Aです。たぶん。自信ないけど。

(わかる人、教えてください。)

 

いずれにしても、Key:Bマイナーの曲をただ弾いているだけでは、

普通には決してたどり着かないコードだと思います。

さっきのノンダイアトニックノートにこんなにぴったりはまる

こんな強いコード、よく思いつくなって感じです。

 

そしてこの独特な響きの導入から、

やっとギターやリズムが加わってくるわけです。

 

次は、リズムの解説です。

 

 

歯にはさがったゴーストノート

 

この曲は、基本的にシャッフルというリズムで構成されます。

一般的にはよく『跳ねるリズム』と表現されたりしますが、

これだけではちょっと伝わりにくいと思ってます。

 

とりあえず先にサビのフレーズを聴いてみてください(2:09)。

 

さきがけて わしは いうたが

 

 の部分です。

よく聴くと、この さきがけ の4文字の中で

音の長さが微妙に違うのがわかるでしょうか。

 

答えを先に言うと、

 と  が少し長く

 と  が少し短いのです。

そういう耳で、もう1回聴いてみてください。

 

1つ目と3つ目が長く、2つ目と4つ目が短い。

て)

 

このリズムを、『跳ねるリズム』と呼んでいるのです。

 

(馬が走るときの『パッカパッカ』と表現されたりもします。)

 

そしてそのリズムの中にも、

シャッフルだのスウィングだの色々種類があるわけですが、

大事なのはこの曲が'’跳ねている’’曲であることです。

 

そして、その’’跳ね’’を支えるのが、バッキング

つまり伴奏にあるわけです。

 

さて、イントロ(0:21)に戻りましょう。

 

この曲のバッキングで使われている楽器は主に

ピアノ・ギター・ベース・ドラム(・キーボード)

になると思います。

 

まず、ベースをよく聴くと、1つ1つの音の前に、

音符として楽譜に表現しきれないような

細かーい音がくっついていることがあります。

 

この細かーい音を、ゴーストノートといいます。

 

ベースとして決して音数の多くない曲ですが、

このゴーストノートのおかげで、決して間延びすることなく

前進する感じシャッフルの絶妙なリズムが表現できています。

 

さらに、ドラムにも同様のことが言えます。

叩かれているパターン自体はシンプルですが、

所々ゴーストノートとしてスネアの直前にバスドラ(かな?)が

入ることで、シャッフルの表現に一役買っているわけです。

 

なお、ちょっと前にイントロの舌打ちについて触れましたが、

チッと聞こえる直前に、少しだけうなり声のような低い声

聞こえるのがわかるでしょうか。

 

これも、ゴーストノートの一種だと思います。

 

この瞬間、コーラスは途切れ、楽器のバッキングもないため

リズムが存在しない時間になります。

しかしこのゴーストノートにより、リズムが途切れることなく

また前に進む感じも継続され、次につながるわけです。

 

後ろで何も鳴っていない瞬間に

ただ単に舌打ちをする場合と、ゴーストノート込みの場合とでは

聞こえ方、リズムの感じ方が全然違います。

 

ゴーストノートを表現できるのは、楽器だけではないんです。

そのセンス、本当に素晴らしいと思います。

 

なお、この曲を通して言えることですが、

ピアノのバッキングは非常にシンプルです。

チャッ、チャッ、チャッ、チャッ、っと

ずっと一定のリズムで、コードを鳴らしています。

 

これだけでは、シャッフルのリズムは表現しきれません。

 

しかし細かいことを言うと、このバッキングの1音1音は

ただのスタッカート(短く切る音)ではなく

ほんの少しだけ長くなっています

ただし、ペダルを踏んだりして、

ジャーンジャーンと鳴らしているわけでもない。

 

この鳴っている時間と、休符の時間の比が

たぶん2:1くらいになっていて、これがすなわち

’’跳ね’’ているバッキングになっているのではないでしょうか。

ちょっと音が細かすぎるので明確ではないですが。

 

そのような心地のいいバッキングでシャッフルを作り出し、

ようやくAメロに入っていきます。

 

堂々とまとめへダイブ

 

今回の解説はここでひと段落とします。

本当なら1つの記事で1曲解説したかったのですが、

言いたいことが多すぎて、まさかのイントロでいったん終了です。

 

今回のおすすめポイントをまとめると、

  • 舌打ち
  • ノンダイアトニックノート
  • シャッフル
  • ゴーストノート

になります。

 

次回はこの曲のAメロから、解説を続けてみます。

転調の話、スキャットの話など、たくさん盛り込んでいきます!

 

こんな解説がいい、こういう内容を触れてほしいなど

要望がありましたら気兼ねなくお伝えください!